2020年初頭から世界的に猛威をふるった新型コロナウイルスにより、私たちは制約の多い環境下での生活を余儀なくされました。2022年12月現在、政府による行動制限はなくなったものの、コロナ禍を通じて、私たちの生活スタイルは大きく変化しています。
ここでは、政府、シンクタンク、コンサルティングファームが発表しているさまざまな調査レポートを参考に、国内の消費や生活に関する変化を整理し、今後の広告、販促を考察します。
目次
- ショッピング ~ますますデジタル化が進行~
- 食生活 ~外食店舗は新たな魅力作りも必要~
- 衣料品 ~「欲しくなくなった」消費者をどう動機づけるか~
- 働き方 ~テレワークにより「浮いた」時間で得たもの~
- まとめ
1. ショッピング ~ますますデジタル化が進行~
緊急事態宣言などによって人々の外出の機会が減少し、これによってリアル店舗全体の売上が減少しました。反対に、店舗に出向かずとも買い物ができる通販やネットスーパーの利用者が増加、「非接触」のキャッシュレス決済サービスの利用者も急増しました。
自宅での時間を大切にする、いわゆる「巣ごもり消費」の典型的な例としては、PC、ビデオレコーダー、テレビなど耐久消費財が売上を伸ばしました。あるいは、特別定額給付金を活用して高級食品などの「プチ贅沢」を楽しんだり、健康関連、自己啓発に投資した(もしくは自己啓発に取り組んだ)消費者もあったようです。
ここ数年、デジタル化の波は徐々に生活に及んでいましたが、コロナ禍が「追い風」となり短期間で急速に進みました。総務省の調査によると、インターネット利用者は高齢者において70%近くになり、すべての年齢層において情報収集の主たるツールがネットになっていることがうかがえます。さらに、高齢者のスマートフォン保有率も50%を超え、デジタルマーケティングの環境が充実してきました。もちろんまだまだ高齢者にはマス媒体、紙媒体は有効ですが、「高齢者には紙が強い」という先入観は、将来的には過去の話になるかもしれません。
2. 食生活 ~外食店舗は新たな魅力づくりも必要~
コロナ禍で伸びた業態の代表的なものが、ウーバーイーツに代表されるデリバリーサービスです。働き手を確保しやすいギグワークという形態が成功要因の一つですが、消費者にとっては「外出しなくていい」だけでなく、有名店、人気店のメニューを並ばずに楽しめるメリットも支持されています。ただし、デリバリーを頻繁に利用しているのは若い層に偏っており、高齢者層にはあまり浸透していません。高齢者層にはテイクアウト利用者が増えており、自宅での飲食にもスタイルの違いが見て取れます。
反面、外食店舗はコロナ禍の行動制限で大きな影響を受け、体力のない個人店舗など、自粛期間中に閉店に追い込まれた店舗も少なくありません。2022年春以降、外食店舗の多くが営業を再開し、利用者もある程度「戻って」いるようですが、今度は材料費の値上がりが利益を圧迫しています。
消費者にとってコロナ禍は、習慣的な外食を見直すきかっけにもなりました。コロナ前までは頻繁に外食店舗を利用していたのに、外出の自粛要請が明けた後、以前ほど外食店舗を利用しなくなったという人がいます。会社でのランチもお弁当やコンビニの食品で間に合わせる人が増えた今、外食事業者には「それでも行きたい」と思わせる、魅力的な店舗作りが求められるのは間違いありません。そのためには、店舗の魅力を効果的に発信する広告、顧客との関係構築に有効なSNSが重要な役割を果たすと思われます。
3. 衣料品 ~「欲しくなくなった」消費者をどう動機づけるか~
コロナ禍が下火になった2022年春以降、日常的な消費は概ね回復基調にあるとされながらも、昨年と比較して購入金額が「減った」カテゴリの上位に、「レストラン」「旅行」「衣料品」があがりました。「レストラン」や「旅行」は外出自粛により利用が減ることは当然ですが、「衣料品」は外出を控えたことで人と会う機会が減り、新しい服を買う必要がなくなったという連鎖が浮かび上がります。気になる点として、「衣料品」を買わなくなった理由に「欲しくなくなった」という意見もあり、今後「旅行」「レストラン」は自然な回復が見込めるとしても、「衣料品」はこのままでは低調な状態が続く可能性があります。購買意欲が低くなった消費者をいかに動機付けるかは、ファッション業界をあげての課題になりそうです。
4. ライフスタイル ~テレワークにより「浮いた」時間で得たもの~
感染予防のためにテレワークが推奨され、業種、職種によっては在宅勤務者が大きく増加しました。大都市圏においては通勤時間に往復3時間かける労働者も少なくなく、その人たちがテレワークに切り替えるということは、一日の時間が3時間増えたことを意味します。内閣府の調査によると、テレワーク経験者はコロナ禍で生活を重視するようになった割合が高く、その約半数が「家族の重要性を意識するようになった」と回答しており、子育て世帯では、家族と過ごす時間が約7割増え、そのうち約8割は今後もこの状況を保ちたいと回答しています。また、自分の親の介護に時間を使う人も増えました。皮肉なことに、コロナによって平時の勤務状態ではできなかったことに費やす時間が取れた人もいたのです。
このようなことから、今後より一層、「家族」をコンセプトにした商品やサービスが登場することが予想されます。娯楽においても「家族で行ける」「家族で楽しめる」がキーワードになるでしょう。広告・販促も家族を意識したものが支持されるのではないでしょうか。
5. まとめ
世界を覆ったコロナ禍は多くの産業に打撃を与え、経済に損害をもたらしました。しかしながら、外出自粛を求められた消費者には、新しい価値観やライフスタイルを見つけた人も少なくありません。コロナ禍を機に、消費者は大きく変わったと言えるでしょう。今後の広告、販促は、このことを認識しておく必要がありそうです。
2023年2月現在、国内における新型コロナ感染者数は5万人前後で推移している状況ですが、行動制限はなく、海外からの入国制限も撤廃されており、旅行やレジャー関連のビジネスは徐々に回復するものと思われます。ただし、物価の上昇や為替の値動き、そして人手不足といった要因があいまって、景気はコロナ前ほどには戻らないという予想もあります。ある研究所の調査では、「2023年の景気予想は『悪くなる』が過去最高を更新」という報告が出ています。世の中を覆う空気はまだまだ重苦しいと言わざるを得ません。
広告や販促は、もちろん企業の販売活動を支援するものですが、同時に、世の中を照らす効果もあります。「こんな時代だからこそ」明日への希望が持て、人々の気持ちをポジティブにするような広告が求められるのではないでしょうか。
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