高齢化が進む日本社会、2022年現在、日本の高齢者(65歳以上)人口は3,626万人と、総人口の28.8%となっています。国民の約3人に1人弱が高齢者に数えられるわけですが、「高齢者」といっても活発に活動する層があれば要介護の層もあり、その消費傾向にも大きな違いがあるはずです。ここでは高齢の人々を大きく「シニア層」と位置付け、最近の統計から得られるプロモーションのヒントをまとめます。
目次
ますます拡大する高齢者市場
内閣府の「高齢化の推移と将来推計(1)」によると、2010年をピークに我が国の総人口は減少傾向に入りますが、高齢者の比率は急激に大きくなっていきます。その内容は、65歳以上の人口がさほど大きく変化していないのに対し、特に15~64歳が年々減少していくものと予想されています。
人口の約3分の1を占める高齢者の消費市場は当然大きくなると予想され、みずほコーポレート銀行の調査(2)によると、2025 年の65歳以上の市場規模は100兆円以上と想定されています。
これほど大きな市場になると、「シニア」をひとかたまりの特徴で語ることは難しくなります。まだまだ元気で働いている人と、要介護の人とでは消費傾向は大きく異なるでしょう。総務省の「労働力調査基本集計長期時系列表」(3)によると、2022年10月現在の65歳以上の就労人口は921万人で、65歳人口の約25%です。この層がシニア消費を大きくけん引するものと思われます。まだ健康に自信があるこの層は、健康や趣味はもちろん、自分を高めるための学習にもお金を使います。対して非就労の層は、医療・医薬に対する支出に備えて消費を小さくまとめる方向に発想しそうです。
シニアはいつまでも「ネットが苦手」?
シニア層といえば「ネットよりも紙媒体」と思われがちですが、そのイメージも徐々に変わりつつあります。総務省の「令和3年通信利用動向調査」(4)によると、今や60代以下のネット利用率は90%を超えています(表1)。時間が経てばその層がシニア層に移動するので、10年後、20年後にネットはほぼ全国民に行きわたるものと考えられます。
とはいえ、現段階ではまだ「ネットよりも紙媒体」のシニアが身の回りに多い印象もあります。実態はどのようなものでしょうか。
年齢階層別のネット利用機器の統計では、60~69歳で約70%、70~79歳で約40%の人がスマートフォンを保有。PCよりスマホを保有している人が多いことが分かります。
SNSの利用状況も60~69歳で約71%、70~79歳で約60%が利用しているという統計があるのですが、この「SNS」にはLINEが含まれているとのこと。ということは、スマホ普及の大きな要因はLINEかもしれません。主に家族とLINEでメッセージのやりとりをするためにスマホを購入した(もしくはプレゼントされた)シニアは多いのではないでしょうか。
いずれにせよ、ディスプレイ広告などでは配信の対象外にされることの多い「70歳以上」が、今後は無視できない存在になりそうです。
次に、マーケティング的な視点で見てみましょう。シニアはネットで商品を購入するのでしょうか。上記資料の「年齢階層別インターネットの利用目的・用途」を見ると、「商品・サービスの購入・取引」を40%以上が経験しています。これは、シニアは「ネットよりも紙媒体」というイメージを持っている方には意外に映るかもしれません。統計には詳細も記載されており、「金融取引」が約18%、「商品・サービスの購入・取引」が約39%、「デジタルコンテンツの購入・取引」が約7%ということです。「金融取引」は各種の決済サービス、「商品・サービスの購入・取引」はネットショッピング、「デジタルコンテンツの購入・取引」は動画や映画などの有料サービスと考えられます。
自宅にいたままで用事が済ませられるネットサービスは、「動くのが億劫」なシニアのニーズにマッチしていることもあり、今後ますます利用者の割合は増加することが予想されます。
シニア向けプロモーションを成功させるために必要な視点
ここまで政府発表の統計などから、シニア層の大きな傾向を見てきました。では、これらを参考に、シニア層向けのプロモーション活動を成功させるために必要な視点を以下にまとめます。
① 「シニア」でひとくくりにしない
大事なことは、「シニア」という個人がいるのではないということです。国民の3分の1弱を占める大きなカテゴリーの中には、さまざまな事情や個性を持った人々がいます。たとえば就労して自分磨きにお金をかけるようなアクティブな層がいれば、年金や公的な補助を頼りにコンパクトな生活を心がける層もいます。大きな傾向は押さえつつも、その中のどのような層が自社のターゲットなのか、絶えず検証することが必要でしょう。
② アナログなニーズに応える
現在のシニア層はネットにさほど抵抗がないと考えられますが、それでも視力の衰えから、スマホの小さな画面より新聞や雑誌など広げて見られる媒体を好む方もおられます。あるいは、商品やサービスについて質問やクレームがあれば、メールよりも電話で企業とコンタクトを取ろうとする方もまだまだおられます。いわば「アナログ」的なニーズですが、シニア向け商材を扱って成功している企業は、このような事情にしっかり応えています。
多少デジタルに親しんでいるからと言って、シニア層に長年身に付いたアナログ的な思考や習慣は簡単には抜けません。統計には現れにくいその点をいかに汲み取れるかが、シニア向けマーケティングの重要なポイントと考えられます。
③ リアルとデジタルを併用したプランニングを
シニア向けの広告プランニングでは、多角的な施策の組み合わせを検討することが必要です。若年層にはデジタルのみで完結するプロモーションであっても、シニア層はマス広告や同梱などで商品を知り、ネットで購入や申し込みをするパターンが多々あります。現在の50代がシニア層になるころには、利用する広告媒体もネット主体になっていると思われますが、まだ数年はリアル、デジタルを併用した複合的なキャンペーンが効果的と思われます。
まとめ
シニア向けプロモーションは、ターゲットを単純に年齢層で切れば良いというのでなく、シニア層の中の自社商材ユーザーをよく理解し、広告手法をプランニングするべきです。また上記のように、リアル、デジタルの広告手法の併用が重要ですが、個別に専門会社に依頼した場合、両社の整合を取ることは困難です。ライダースパブリシティにご用命いただければ、それらを組み合わせたプランをワンストップで作成することが可能です。シニア向け商材のプロモーションをご検討の企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
出典
(1) 内閣府「高齢化の推移と将来推計」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2013/zenbun/s1_1_1_02.html
(2) みずほコーポレート銀行産業調査部作成
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1039_03_03.pdf
(3) 総務省「労働力調査基本集計長期時系列表」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/ 第12表
(4) 総務省「令和3年通信利用動向調査」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf